模倣商品の製造販売は違法

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自社商品を保護する産業財産権

他社が展開している商品を模倣し、製造・販売することは違法です。

一般的に、市場で発売されている商品は、産業財産権として、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つの権利で保護されていることがあり、うかつに模倣品を販売すると、後で訴訟等のリスクを負うことになります。

自社を守る産業財産権とは

工業製品は、デザインが優れていたとしても、創作した時点で発生する著作権のように自動的に保護されることはありません。そのため、産業財産権を組み合わせて製品の権利を保護する必要があります。

  • 特許権…自然法則を利用した、新規かつ高度で産業上利用可能な発明を保護例/通信の高速化、携帯電話の通信方式に関する発明
  • 実用新案権…物品の形状、構造、組合せに関する考案を保護例/携帯性を向上させたベルトに取付け可能なスマートフォンカバーの形状に関する考案
  • 意匠権…独創的で美感を有する物品の形状、模様、色彩等のデザインを保護例/美しく握りやすい曲面が施されたスマートフォンのデザイン
  • 商標権…商品・サービスを区別するために使用するマーク(文字、図形など)を保護例/電話機メーカーが自社製品を他社製品と区別するために製品などに表示するマーク

出所:特許庁

模倣品への対策事例

かつて、クロス・トレーディングのネットワーク内でデザイン・製造した商品がありました。本製品はこれまでの市場の中では、良質なデザイン・価格であったことから、全国のショップから引き合いがあり、製造が追いつかない状態でした。

本製品を開発した企業(以下A社)は、意匠権で保護すべきでしたが、特許庁に出願登録する前に市場投入してしまい、「意匠の新規性喪失」の状態でした。当時、意匠の新規性喪失の例外期間は6か月であり、これを過ぎていたのです。※平成30年6月9日より1年に延長(出所:特許庁

このころから、ホームセンターや量販店、インターネットショップで模倣品が見られるようになりました。

不正競争防止法で対抗しよう

開発企業A社の手落ちなので、このまま模倣品を放置しなければならないのでしょうか?

もう一つの対策があります。それは企業間の不適切な競争を防ぐための法律である「不正競争防止法」に基づき、損害賠償請求することです。いくつかに類型されますが、「形態模倣商品の提供行為」という項目に引っ掛かります。

  1. 周知表示混同惹起行為…他人の商品・営業の表示(商品等表示)として需要者の間に広く認識されているものと同一又は類似の表示を使用し、その他人の商品・営業と混同を生じさせる行為
  2. 著名表示冒用行為…他人の商品・営業の表示(商品等表示)として著名なものを、自己の商品・営業の表示として使用する行為
  3. 形態模倣商品の提供行為…他人の商品の形態を模倣した商品を譲渡などする行為
  4. 営業秘密の侵害…窃取などの不正の手段によって営業秘密を取得し、自ら使用し、若しくは第三者に開示する行為など
  5. 限定提供データの不正取得など…窃取などの不正の手段によって限定提供データを取得し、自ら使用し、若しくは第三者に開示する行為など
  6. 技術的制限手段…無効化装置などの提供行為 技術的制限手段により制限されているコンテンツの視聴や記録、プログラムの実行、情報の処理を可能とする(技術的制限手段の効果を無効化する)装置、プログラム、指令符号、役務を提供などする行為
  7. ドメイン名の不正取得などの行為…図利加害目的で、他人の商品・役務の表示(特定商品等表示)と同一・類似のドメイン名を使用する権利を取得・保有、又はそのドメイン名を使用する行為
  8. 誤認惹起行為…商品・役務又はその広告などに、その原産地、品質・質、内容などについて誤認させるような表示をする行為、又はその表示をした商品を譲渡などする行為
  9. 信用毀損行為…競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為
  10. 代理人などの商標冒用行為…パリ条約の同盟国などにおいて商標に関する権利を有する者の代理人が、正当な理由なく、その商標を使用などする行為

形態模倣商品の提供行為とは、不正競争の保護期間については、不競法第19条第1項第5号イにおいて、 「日本国内において最初に販売された日から起算して三年」間と規定されています。(出所

模倣品の証拠を集めよう

最も労力がかかるのは「証拠集め」です。訴訟を起こすまで、気づかれないように行動します。調査していることが模倣企業に伝わると、販売している事実が隠されてしまいます。

まずはウェブショップで販売している模倣品をスクショで残しましょう。次に、実際に注文をし、知人の自宅等に届けさせ、商品の仕様や取扱説明書等を確認します。ここで製品本体の模倣と取扱説明書に掲載されている図表等の著作権の抵触を確認します。取扱説明書等により、製造販売社が特定されます。

実際に路面店で販売している状態の写真を残すことで、「模倣品を販売している」証拠となります。製造販売会社を調べると愛知県の企業でした。そこで、「当たり」を付けます。当該模倣企業を中心に、同心円内の近隣のホームセンター、量販店をすべて回ります。当該企業の営業のしやすい近くの店舗を探すのがポイントです。また、帝国データバンクや商工リサーチなどの調査報告書を購入し、仕入れ先・販売先を調べそこを当たる方法もあります。

損害賠償金は高めに設定しましょう

自社の販売網から試算した想定販売台数から想定される損失利益、弁護士・弁理士等の訴訟関連費用をできるだけ多めに試算します。模倣初期段階でしたが、5,000~8,000万円程度の訴額と設定しました。
※訴額について、弁護士・弁理士の報酬も含まれるため、出来るだけ高めに設定したがる感はあります。

模倣品を製造している企業、販売しているウェブショップなどに一斉に内容証明等を送り、模倣企業を前面に引きずり出します。

A社の基本的な主張はほぼ通り、損害賠償金もそれなりにいただくことができたということです。※ただし販売実績の開示請求に対し、思いのほか「売れていなかった」ため、賠償金額は想定よりも低くなりました。

本件のように、必ず損害賠償請求ができるとは限らず、実はこれに対する対抗策も考えることができますので、どこで妥協するか、落としどころを事前に想定しておくとよいでしょう。

プロダクトは特許・意匠権・実用新案・商標権で保護しよう

その後、A社は意匠権、実用新案、商標権に加え、著作権の組み合わせで自社製品の権利を保護するとともに、取扱説明書に「許諾なき模倣品の製造・販売は訴訟のリスクを負います」という文言を記載することで模倣者へのけん制としています。

“Unauthorized manufacturing and sale of counterfeit products carries the risk of litigation.”

※意匠権、実用新案、商標権は、中小企業でも対応しやすい分野です。素直に専門家に相談するのも手です。

商品の開発には、それなりのコストがかかるのは当然で、加えて、「ヒット商品を作らなければならない」という企画開発チームの思いがあります。これを模倣という安易な手法で収益を盗み取るよりも、より良い商品を作ろう、違う商品を作ろう、という付加価値を生み出すことが企業経営の本筋だと思います。